2023年12月19日経営支援コラム
経営者が知っておくべき、アフターコロナで生き残るための経営術
コロナ融資の返済負担や人件費の上昇などで業績の回復が遅れている中小企業の倒産件数が
高水準で推移しており、2023年11月まで19か月連続で前年同月を上回る倒産が発生しています。
注目されている『人手不足倒産』の急増に加えて、
『公租公課滞納倒産(社保倒産)』(税金や社会保険料の滞納による倒産)
件数はコロナ禍前の3倍を超える水準です。
アフターコロナの大倒産時代を中小企業が生き残るためには、収支と資金繰りの改善、
人材の確保、補助金などの活用による経営の立て直しを急ぐ必要があります。
アフターコロナで生き残るための経営術は4つの観点から考えます
2024年も中小企業を取り巻く経営環境は厳しい状況が続くと予測されています。
理由として、消費の落ち着きによる売上回復の遅れ、人手不足と人件費の上昇、
コロナ融資の元金返済開始、コロナ特例による社会保険料納付猶予期間の終了などがあげられます。
不安定なアフターコロナの時代を中小企業が生き残ってゆくポイントとして、次の4つがあげられます。
・資金繰りの改善
・価格転嫁などによる売上増加
・人材確保、人材育成
・補助金、助成金を活用した前向きな投資
生き残るための経営術その1『まずは資金繰り』
資金繰りは中小企業の生命線です。まずは資金繰りを把握し、
改善することが生き残るために必須です。
資金繰り表で資金不足を予測する
資金繰りを把握するために最も有効な方法は、資金繰り表の作成です。
当月や来月の入出金予定を日次で把握する資金繰り表(日繰り表)は多くの企業が作成しています。
金融機関と上手に付き合い、円滑に資金を調達している経営者は、
資金繰り表(日繰り表)とともに資金繰り表(月次)を活用しています。
資金繰り表(月次)の標準的なフォーマットは次のとおりです。
資金繰り表(月次)を活用する理由は次のとおりです。
・資金不足が発生する時期をより早く把握することが可能
・金融機関との融資の交渉に時間的な余裕が生まれる
・長期の資金繰り見通しを明らかとすることで、金融機関からの信頼が高まる
借り換えする
資金繰りを改善する方法の1つが借り換えです。
借り換えとは、新しい借入で返済途中の融資を返済することで、
新しい借入に乗り換えることを指します。
利益以上に借入金の返済を行っていることにより資金が減少しているときは、
借り換えにより借入金の元金返済額を少なくすることが有効です。
リスケジュール
リスケジュールとは、返済している借入の元金返済を減額する手続きのことです。
略してリスケと呼ばれます。
借入している金融機関に元金返済額の減額を申し出て、返済額を減らしてもらう必要があります。
リスケ中は新たな借入が困難となることが多いため、
事前に資金繰りの改善策に詳しい専門家に相談することがすすめられます。
資産の現金化
資産を売却することで資金繰りを改善することができます。
売却を検討可能な資産は不動産だけに限らず、次のような資産も検討することが可能です。
・受取手形の割引
・売掛金の流動化(期日前の現金化)
・有価証券の売却
・車両などの売却
不動産や車両の売却は時間がかかる、その後の事業活動の縮小を招くなどの不便さがあります。
不動産や車両の売却を検討するときは、
リースバック(売却した資産を買い手から借りて、売却前と同じように使用する)も検討可能です。
税金・社会保険料の滞納は避ける
税金や社会保険料の滞納は極力避けることが望ましいです。その理由は次のとおりです。
・延滞金が高額
・滞納や延納中は金融機関からの借入が難しくなる
・社会保険料や労働保険料の未納があると助成金を受給できないことが多い
・滞納期間が長くなると預金や売掛金を差し押さえされる可能性がある
税金や社会保険料などの納付が困難な場合は滞納のままとせず、
換価猶予や納税猶予の手続きにより差し押さえを回避することが必要です。
また既に税金などを滞納し借入が難しい場合は、
ファクタリング(売掛金の期日前の現金化)などの資金調達を検討します。
生き残るための経営術その2『価格転嫁』
売上は自社の地道な努力で増加させる余地があります。
売上増加の観点は、販売相手・価格・量・質(付加価値)
売上を増加させるためのポイントは次の4つです。
・販売相手を増やす、変える
・販売価格を引き上げる
・販売量を増やす
・商品の質を上げる(付加価値をつける)
①販売相手を増やすとは、新規販売先を開拓する、
以前は取引があった販売先への納品を再開するなどです。
また販売相手を変えるとは、例えば商社経由で販売している商品をECサイト上で直販する、
輸出に取り組むなどの方法を指します。
②販売価格の引き上げるは利益の増加に直結するため、
積極的に検討したい対策です。
③の販売量の増加はまとめ買いを誘う取り組みや現在の販売先へ
別の商品を同時に納入するなどがあげられます。
④として、より上質の材料を使用した高価格商品を投入する、
現在の商品やサービスの特長をアピールする、
広告宣伝でブランドイメージを構築するなどがあります。
価格転嫁をすすめる
売上増加のために優先的に取り組みたい対策が値上げです。
中小企業庁の調査によると、63%の企業が価格交渉により価格転嫁できたと回答しています。
コスト高で値上げが広まっている時期は交渉しやすいタイミングです。
従前の価格を見直ししていない、値上げ交渉をしたことがない企業は、
最近のコスト高を理由とする販売価格への転嫁に取り組むことが望ましいです。
引用: 中小企業庁 価格交渉促進月間(2023年9月)フォローアップ調査の結果について(2023年11月)
価格以外の条件を見直ししてもらう
販売価格の転嫁が難しい場合は、価格以外の条件をより有利とする交渉が考えられます。
交渉する条件の例は次のとおりです。
・受取手形のサイト短縮
・まとめ発注(発注頻度を下げ、一回あたりの納品量を増やす)
・発注から納品までの期間の長期化
生き残るための経営術その3『人手不足対応』
今後も人手不足が続くと予測されているため、人材確保、人材育成が業績の回復を左右します。
人材採用方法を見直す
人材採用の見直しによる人材確保の例として、求人方法の見直しがあげられます。
例えば、ハローワークの求人票「仕事内容」欄の90文字を見直す方法です。
求職者が最も閲覧する項目は「仕事内容」41.1%、「職種」24.9%です。
最も重視される仕事内容の欄をよりわかりやすく、
具体的に記載することで求職者が入社後をイメージしやすくなり、
採用に差をつけることができる可能性があります。
引用:ハローワーク品川 求職者アンケート集計結果~ハローワークインターネットサービスにおける求人検索・閲覧状況について~
従業員の働き方、働く環境を整える
労働環境の整備は、従業員の離職防止とともに人材採用対策としても有効です。
まず自社の就業規則を最新の労働法改正にあわせた内容とし、
若い世代が重視する以下の事項をより多く自社に導入することが有効です。
・ハラスメントがない
・休日数が多い
・土日祝日が休み
・従業員のライフイベント(誕生日など)にあわせて休暇を取りやすい
在籍している従業員の能力を高める
従業員のOFF-JTなどを支援する助成金制度を活用し、
従業員のスキルアップを図ります。
また人手が不足するときには、
パート・アルバイト従業員に『年収の壁』を超えて働いてもらうなど全社的な取り組みを検討します。
生き残るための経営術その4『補助金・助成金をフル活用』
人材採用難や人手不足への対処のための費用は、補助金や助成金を活用します。
補助金・助成金は種類が多いため、
自社の取り組みが対象となる支援策の受給漏れがないように、専門家への相談がすすめられます。
設備投資で同業者に後れを取らないようにする
賃上げした企業のうち64%は業績が改善しない中で賃上げしており、
利益を圧迫する要因となっています。
その一方で、価格転嫁により業績が改善した企業は賃上げと設備投資を積極的に行っているため、
今後は人材と設備の2つの面で企業間格差が拡大することとなります。
引用:内閣官房 国内投資拡大のための官民連携フォーラム(2023年10月)資料12
中小企業が使いやすい補助金(令和5年度補正予算)・助成金
人手不足対策となる省人化投資を支援する補助金や助成金制度が拡充されています。
中小企業が活用を検討したい主な補助金・助成金は次の3つです。
・ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠
・IT導入補助金
・キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)
ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド型)枠
ものづくり補助金は製造業だけでなく、卸・小売業、サービス業、建設業なども
利用可能な補助金です。
新設される省力化(オーダーメイド)枠は、
AIやセンサーなどのデジタル技術を組み合わせた省力化投資が対象です。
補助率は最大2/3、補助上限額は1億円です。(従業員数により異なります)
引用:中小企業庁 ものづくり補助金について(Ver.1.0)(2023年12月)
IT導入補助金
IT導入補助金は総務や経理などのバックオフィス業務のDX化が対象となる補助金です。
システム投資だけでなく、インボイス枠(インボイス対応類型)においては
PCやタブレット、券売機なども対象となります。
補助率は最大4/5、補助上限額は450万円(複数社連携IT導入枠を除く)です。
引用:IT導入補助金事務局 IT導入補助金2024概要リーフレット
「年収の壁・支援強化パッケージ」キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)
パート・アルバイト従業員が扶養に入ったまま
年収130万円以上で働くことができる場合が対象となる助成金です。
1人あたり最大50万円が助成されます。
手当等支給メニュー、労働時間延長メニュー、併用メニューの3種類があります。
中でも労働時間延長メニューは、週4時間以上の労働時間延長があれば賃金増額が不要であるため、
人手不足解消策として検討しやすい内容です。
引用:厚生労働省 キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)リーフレット
まとめ
アフターコロナにおける中小企業を取り巻く環境は一層厳しくなっています。
倒産が急増している時代に中小企業が生き残ってゆくためには、
資金繰りの改善、売上の増加、人手不足対応などが必要です。
また、人手不足や生産性向上のための投資は補助金や助成金の活用を検討します。
これらに取り組むときは、自社の強みの再確認、事業の方向性と経営施策の明確化、
就業規程の整備など事務が負担となります。
忙しい社長様が自社に最も合った施策を検討するためには、
資金繰りの改善からファクタリング(売掛金の現金化)、
リースバックなどまで総合的なアドバイスが可能である、頼れる相談相手の活用が効果的です。
資金繰りや銀行融資、資産の有効活用などのご相談は弊社専門家のように企業に寄り添い、
社長様と共に歩む専門家への相談がすすめられます。