2023年10月10日経営支援コラム
資金繰りが厳しい時の駆け込み寺『活性化協議会』を活用する際のポイント
活性化協議会は資金繰りが厳しくなっている中小企業を支援する公的機関です。
経営者が認定支援機関と計画書を作成する費用が補助されるほか、
リスケジュールなどの金融支援を要請する時に金融機関との調整役となってもらえるなどの
専門的な支援を受けることができます。
中小企業の駆け込み寺『活性化協議会』を経営改善・財務改善に活用するポイント
活性化協議会(正式名称は中小企業活性化協議会)とは資金繰りが厳しくなっている中小企業の改善を支援する公的機関です。
自社の課題を見付けたい企業、リスケジュール(返済軽減)を考えている企業、
抜本的な改善が必要な企業まで幅広く活用できます。
中小企業活性化協議会は公的な支援機関
中小企業活性化協議会(以下、単に活性化協議会と記載します)は
中小企業を支援する公的機関の1つで、全国の商工会議所や公的な機関が運営しています。
従前の『中小企業再生支援協議会』と『経営改善支援センター』の2つが統合され、
2022年4月に現在の名称となりました。
中小企業活性化協議会とは
活性化協議会の支援は大きく分けると次の3つです。
■自社における経営改善計画の策定
■リスケジュールなどの金融支援を必要とする中小企業と関係者との調整
■円滑な廃業と経営者保証の整理
活性化協議会の2022年度における実績は次のとおりです。
■相談件数6,409件:「企業からの相談」が最も多く48.1%です。
■計画策定完了件数1,067件:うち「リスケジュール」が949件(88.9%)を占めています。
中小企業活性化協議会の業務は『経営改善計画策定支援』と『再生支援』
活性化協議会の業務は支援対象によって2つに分かれます。
■経営改善計画策定支援:認定支援機関をサポート
中小企業が認定支援機関の支援を受けて、経営改善計画を作成する場合のサポートです。
企業が認定支援機関へ支払う費用の一部が補助されます。
また商工会議所や信用保証協会などが自己負担額を更に補助する制度を設けている地域があります。
■再生支援:中小企業が取り組む財務面などの改善を直接支援
経営状態が悪化しており、現状では資金繰りが行き詰まる可能性がある中小企業が対象です。
活性化協議会が企業と金融機関との間の調整役となり、抜本的な改善計画の作成と
進捗管理をサポートします。
企業が認定支援機関へ支払う専門家費用の一部が補助されます。
中小企業活性化協議会の計画策定支援は専門家への支援
活性化協議会の経営改善計画策定支援の内容は次の2つです。
■早期経営改善計画策定支援(通称 ポスコロ事業)
■経営改善計画策定支援(通称 旧405事業)
早期経営改善計画策定支援は会社の健康診断
人に例えると健康なうちに受診する健康診断です。ポイントは次の5点です。
■経営者が自社を再点検し、専門家とともに改善策を計画書として取りまとめることが目標
■リスケジュールなどの金融支援を必要としない状態を想定
■様式、記載例、実務指針が整備されており、経験が少ない認定支援機関も対応可能
■計画作成後、進捗状況を金融機関と共有する伴走支援が必要
■専門家費用の3分の2が補助対象
※伴走支援(期中)は事業者の希望に応じて実施
早期経営改善計画を申請する企業は比較的規模が小さい企業が多くを占めています。
・売上高……1億円未満59.3%、1~3億円25.8%
・従業員数……10名未満63.3%、10~20名18.5%
引用:中小企業庁 中小企業政策審議会 金融小委員会(第10回)事務局説明資料
経営改善計画策定支援(旧405事業)は自力でのリスケジュール
病気にかかった際に医師から処方箋を受け取るイメージです。ポイントは次の5点です。
■リスケジュールを想定
■「通常枠」と私的整理手続を対象とする「中小版GL枠」の2つ
■企業による調整ではリスケジュールの合意が得られない場合は再生支援への引き継ぎが可能
■税理士や公認会計士、コンサルタントなどへの専門家費用が補助対象
■専門家費用の3分の2が補助対象
経営改善計画策定支援を申請する企業は上記の早期経営改善計画策定支援と同規模~やや規模が大きい企業が多くなります。
・売上高……1億円未満36.0%、1~3億円35.1%
・従業員数……10名未満42.5%、10~20名23.9%
引用:中小企業庁 中小企業政策審議会 金融小委員会(第10回)事務局説明資料
中小企業活性化協議会の再生支援は経営者と金融機関との調整役
再生支援は、上記の(早期)経営改善計画策定支援よりも経営状態が厳しい企業が対象です。
活性化協議会は中立の専門家として、企業と金融機関との調整役となります。
中小企業の経営状態に応じた3つの支援
再生支援の3つの支援策と利用する企業のイメージは次のとおりです。
■収益力改善支援:収益力や財務体質の改善が必要。必要があればリスケジュールを要請
■(プレ)再生支援:収益力はあるが、財務面の抜本的な見直しが必要
■再チャレンジ支援:事業継続が困難で、債務や保証の整理が必要
収益力改善支援
経営状態が厳しい企業を対象とし、企業自身による収益力改善計画の策定を支援します。
策定対象となる期間は下記のとおり異なります。
■借入金返済を継続できる企業
・1~3年間の行動計画(収益力改善アクションプラン)と簡易な収支・資金繰り計画を作成
・モニタリングは年1回以上
■リスケジュールが必要な企業
・1年間の収益力改善計画を作成
・モニタリング頻度は四半期に1回以上
・計画の策定または達成が困難な場合は再生支援への移行が可能
プレ再生支援、再生支援
収益力はあるものの、借入金が過剰など財務面に問題がある企業が対象です。
DDS(今の借入を劣後ローンへの組み替え)、DES(借入の株式化)や債務免除など、
抜本的な金融支援のための計画策定や企業と金融機関との調整役となります。
再チャレンジ支援
企業の立て直しが困難で廃業を検討している企業、廃業後に再度の経営を考えている経営者が対象です。
廃業型の私的整理手続へのアドバイス、廃業時の経営者保証の整理をサポートします。
こんな時は活性化協議会の活用を検討
経営者のお悩み別の活用法は次のとおりです。
自社の健康診断
・専門家の意見を聞きながら自社の経営状態を全体的に点検したい
・後継者へ譲る前に、自社の課題と対策を整理したい
⇒ 早期経営改善計画策定支援の利用がおすすめです。
銀行からの融資、リスケジュールのために改善計画書が必要
・リスケジュールを相談した銀行から、経営改善計画書の提出を求められた
⇒経営改善計画策定支援を利用することで、事業計画書の作成費用が補助されます。
収益力改善のために専門家のサポートが必要
・赤字幅が大きい、連続して赤字など抜本的な事業見直しが必要
・取引銀行数が多く、自社だけではリスケジュールをまとめることが困難
⇒収益力改善支援を検討しましょう。
抜本的な金融支援が必要
・黒字ではあるが、リスケジュールでは返済期間が長くなりすぎる
・現在の利益では、債務償還年数や債務超過解消年数が長すぎると金融機関から指摘された
⇒(プレ)事業再生の利用が検討可能です。
円滑に廃業したい、廃業しても再スタートしたい
・廃業したいが経営者として保証しており不安
⇒再チャレンジ支援を検討しましょう。
活性化協議会を利用するメリットデメリット
活性化協議会を活用するメリットデメリットをまとめると次のとおりです。
窓口で相談する前に大切なこと
活性協議会の窓口へ相談する前に自社で考えておくべきポイントが2点あります。
自社の希望を明確化
活性化協議会を利用する目的と効果を明確にしましょう。
銀行への新規借入の申込みやリスケジュールのために必要、
後継者とともに会社を見直すために作成など、企業の目的と状況によって支援策が異なります。
周囲に相談
自社の状況を相談している相手が既に認定支援機関となっているケースもあります。
また販路開拓を優先すべきなど、自社の課題と活性化協議会の特性が合っているかも相談できます。
弊社のように経営者に寄り添い、親身に相談にのる専門家を普段から探しておきましょう。
まとめ
活性化協議会を活用することで、自社の経営を見直しする企業から抜本的な財務体質の改善が
必要な企業まで、自社の経営状態に応じた専門家の支援を受けることができます。
また費用がネックとなっていた計画書の作成については費用の3分の2が補助されるなどの
支援措置があります。
自社の改善をすすめる原動力は計画書ではありません。
改善へ向かう経営者の意志と、経営者と共に歩む専門家の協力が重要です。
自社の経営改善にお悩みの経営者は弊社専門家にお気軽にご相談ください。