2023年09月26日経営支援コラム
経営改善、DX化、輸出などさまざまな支援策がある『中小機構』を活用するポイント
中小機構は中小企業支援の専門機関です。
起業やスタートアップ企業、
現場改善や海外進出などさまざまな場面で活用できる公的な支援制度があります。
中小機構を活用する時は自社で優先的に取り組む課題を明確化し、
適切な専門家を活用することが効果的です。
自社の経営改善のために『中小機構』(中小企業基盤整備機構)を活用する時のポイント
中小機構は中小企業への支援を専門とする公的な機関です。
現場改善、事業承継、EC取引から海外進出まで、幅広い局面で利用できる多くの支援策があります。
今回は中小機構の多くの支援策の中から、おすすめの支援策と活用ポイントを紹介します。
中小企業を支援する公的機関『中小機構』とは
中小機構(正式名称は独立行政法人中小企業基盤整備機構)を簡単に説明すると次のとおりです。
中小企業基盤整備機構とは
中小企業政策を実施する中核的な機関として位置付けられており、
中小企業の経営者に役立つ支援メニューが数多くあります。
中小機構の支援策の主な特徴は次のとおりです。
■創業から成長、事業再生までの総合的な支援
■全国的なネットワークで幅広い分野における約3,000名の専門家と連携
■中小企業だけでなく、支援する専門機関もサポート
中小機構は創業・スタートアップから事業再生まで幅広く支援
起業予定者から創業間もない企業、事業再生や事業の承継まで、
さまざまな局面における支援策が揃っています。
企業の状態別の主な支援策は次のとおりです。
■起業・創業期
・インキュベーション施設の運営
・『地域活性化パートナー』(大都市圏の流通業者など)と連携した販路拡大支援
・スタートアップ企業向けの資金調達や業務提携を支援する『FASTAR』
■成長期
・海外企業へアピールするBtoBマッチングサイト『J-GoodTech(ジェグテック)』の運営
・専門家が無料で助言する『海外展開ハンズオン支援』
・海外企業トップとのオンライン商談会『海外CEO商談会』※1商談5,500円
・企業に応じた専門家派遣と費用の一部が補助される『国内ハンズオン支援』
■成熟期
・事業承継に関する専門家の派遣
■各ステージ共通
・IT導入のための簡易診断と専門家からの無料アドバイス
・ロボットやIoT導入による生産性向上投資への無料提案
・小規模企業共済、経営セーフティ共済(倒産防止共済)
中小機構の注目の支援策
数多くの支援メニューのうち利用を検討したい支援策は次のとおりです。
創業・スタートアップ企業への支援
おすすめの支援策は『地域活性化パートナーの協力による販路開拓支援』です。
地方のメーカーが大都市向けに拡販したい時に有効な内容です。
・消費財分野(食品、雑貨など)の新商品開発などに取り組んでいる中小企業が対象
・バイヤーとしてパートナー企業(大都市圏の流通・通信など大手企業)約160社が参加
・各業界の現役バイヤーが商品化をアドバイス
・パートナー企業のECサイトやカタログへの商品掲載をサポート
経営改善(国内ハンズオン支援)
『国内ハンズオン支援』では、企業の問題点に応じた各分野の専門家
(大企業の工場長や部門責任者だった方、中小企業診断士や専門コンサルタントなど)を
派遣してもらうことができ、派遣費用への補助制度があります。
具体的な支援内容は次のとおりです。
■専門家継続派遣
企業の主体的な改善を数か月~10か月間程度(20回程度)かけて、専門家が指導します。
社内で組織した改善チームを専門家がサポート、フォローアップする仕組みです。
■経営実務支援
マーケティングや生産技術など特定の課題の解決を支援する専門家を5か月間(10回以内)
派遣してもらい、指導を受けます。
■戦略的CIO育成支援
IT活用のための企業内人材育成(20回程度)やIT導入計画の策定を
支援(8回程度)してもらうことができます。
■販路開拓コーディネート
マーケティング企画支援(8回程度)、テストマーケティングへの専門家同行派遣(15回以内)と
フォローアップ(10回程度)などがあります。
強靭化
自社の業務フローの見直し、工場内のレイアウト改善や設備更新を実施する場合において、
BCPの観点を取り入れることは珍しくありません。
BCP計画と似ている『事業継続力強化計画』の認定を受けると下記のメリットがあります。
■税制優遇措置(取得価格の20%特別償却など)
■ものづくり補助金での優先採択(加点措置)
■政府系金融機関からの融資利率低減、信用保証協会の保証枠の増枠
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)
取引先が倒産して売掛金の回収不能が発生した場合などに、
掛金総額の10倍を限度とする無担保・無保証の融資が受けられる積立金です。
利用のメリットは次の点です。
■掛け金は経費処理。1年分の前払いも損金処理が可能
■掛け金月額は5,000円からと少額で利用可能
■積立限度額は800万円
■融資限度額は掛け金の10倍(最大8,000万円)まで、無利息・無担保・無保証
■解約時は80%以上(加入後12か月以上)または全額の返戻(加入後40か月間以上)
■取引先の倒産が無くとも一時貸付金として借入が可能(解約手当金の95%まで)
小規模企業共済
従業員数が5人(業種により20人)以下の個人事業主、
会社の経営者が退職金として積み立てする共済です。
利用メリットは次のとおりです。
■掛け金は所得控除の対象
■退職金の受取時は、一括受取は退職所得扱い、分割受取の時は雑所得扱い
■掛け金月額は1,000円から70,000円と
■掛け金の残高の範囲内で、低利率(0.9%または1.5%)での借入が可能(2023年9月現在)
■フリーランスも加入可能
海外販路開拓、海外企業との取引(海外ハンズオン支援)
「海外へ自社製品を紹介したい」「海外へ輸出したい」「海外向けの越境ECを増やしたい」
などの計画に対応する支援策が揃っています。
■海外ハンズオン支援
海外企業取引の最初の一歩、商談の注意点から大型投資まで、専門家の無料アドバイス、
商談への同席、フォローアップなどのサービスがあります。
■海外CEO商談会
海外企業のCEOが出席するオンライン商談会へ参加できます。
海外企業への営業、海外企業の特徴ある製品の輸入や業務提携などを目的に、
海外のベンチャー企業から大手企業までが多数参加します。
■J-GoodTech(ジェグテック)
国内中小企業約23,000社が登録する商談サイトです。
製品開発から事業提携まで幅広いニーズを登録できます。
提携候補として国内大手企業約800社、
販売相手として国外の支援機関からの推薦を受けた海外企業約8,000社が登録しています。
利用登録料は無料、自社の紹介ページの英語翻訳も無料です。
経営者の悩み別、中小機構の活用法
経営者のよくあるお悩み別の支援策を紹介します。
■事業を始める(始めたばかり)で不安
インキュベーション施設へ入居した企業は、常駐のマネージャーから
アドバイスを受けることができます。
忙しい起業予定者の方は企業相談AIチャットボット『起業ライダーマモル』で
24時間相談サービスを活用できます。
■経営改善へ専門家の助言が欲しい、相談相手が見つからない
「原価管理の仕組みを導入したい」「在庫管理や発送業務を合理化したい」
など個別の取り組みへの解決は、その道のプロに相談しましょう。
中小機構は多くの専門家と提携しているため、
自社の業務に合ったアドバイスが可能な専門家を紹介してもらうことができます。
■自社の製品・商品を海外へ売りたい
『J-GoodTech』を利用することで、自社HPの改修などをおこなうことなく、
海外企業への製品アピールが可能です。難しい英語翻訳も無料サービスで対応できます。
■ IT化、DX化……どこから始めるべきかわからない
「IT化って何をすればいい?」「テレワーク体制を整えたい」などのお悩みは、
全3回のコンサルティングが無料となる『IT経営簡易診断』が最適です。
なおIT経営簡易診断サービスは2023年度末までの支援策であり、2023年12月頃に受付終了の予定です。
■人手不足で生産工程をロボット化したい
合理化、IoT化の設備投資を検討する時は『生産工程スマート化診断』
で全3回無料のアドバイスを受けることができます。
実行する場合は専門家を派遣する支援策との組み合わせも可能です。
■取引先が倒産した時の備えが必要
取引先が倒産した時の緊急的な資金調達は、経営セーフティ共済が有効です。
普段は経費処理できる積立金、取引先の倒産が無くとも借入することが可能など便利な制度です。
■ 個人事業主で退職金が不安
小規模企業共済による退職金作りがおすすめです。
最大で月額7万円の掛け金が可能です。
資金に余裕がある時に年間一括払いをすることで経費処理するテクニックなどが有名です。
中小機構を利用する時のポイント
中小機構を上手に活用するポイントは次のとおりです。
中小機構は幅広い分野で専門家がスタンバイ
まずは自社で相談したい内容をなるべく明確としましょう。
生産性改善、物流合理化、省人化、都市部への販路開拓など、
取り組むべき課題が明確であるほど、自社に合った支援策や専門家を見つけやすくなります。
国内ハンズオン支援は自社の体制づくりも必要
専門家継続派遣は自社における改善活動を支援するサービスです。
自社内で複数人の改善チームの編成を求められることが多いため、
従業員数が数十人以上の企業に向いています。
海外ハンズオン支援は「輸出が初めて」「ECを始めたい」から「海外企業との連携」まで
自社の製品を海外企業に売りたい、越境ECを始めたいという場合は、
海外向けのアドバイザーが対応します。
相手国の法令や販路となるプラットフォームの選択などは、その道のプロの意見が有効です。
中小機構への相談前に
中小機構は全国に10拠点があります。
各地の支援機関や専門家と幅広く連携しているため、身近な機関からの紹介も可能です。
気軽に相談することもできますが、事前に自社で検討しておくと良い点があります。
自社で取り組むべき課題に優先順位をつける
自社が取り組みたいと思う事項が、真に優先的に取り組む課題であるとは限りません。
まずは自社のことを良く理解し、何から取り組むべきかを一緒に悩んで相談に乗ってくれる専門家へ
相談することで、自社が取り組むべき課題を明確化しやすくなります。
利用している専門家のサポート内容を再確認する
既に自社で利用している専門家が中小機構の支援先を知っていることがあります。
また自社を理解している専門家で類似の支援ができる場合もあります。
まずは自社の身近な専門家に相談してみることも検討しましょう。
まとめ
中小機構は中小企業支援の専門機関の1つであり、中小企業を支援するさまざまな支援策があります。
自社が取り組むべき多くの課題の中で、優先的におこなうべき事項は何か、
どうすればよいかなどの経営者の悩み事は、経営者と共に歩む弊社専門家へお気軽にご相談ください。