2023年11月21日経営支援コラム
人手不足の今こそ中小企業経営者が検討すべき、専門家がおすすめする助成金4選と申請時の5つのポイント
人手不足や賃上げで上昇する人件費については、助成金の支給を受けることが可能です。
助成金は要件を充足していれば受給できることが多いため、積極的に活用します。
種類が多く、事前の計画作成と詳細な申請要件を充たすためには詳しい専門家を活用します。
人手不足の今こそ活用!中小企業経営者におすすめの助成金4選と申請時の5つのポイント
人手不足、採用難、賃上げ、社会保険料の増加など人件費の上昇が中小企業の利益を圧迫しています。
今後も続くと予測される人手不足などに対応するためには、労働環境や従業員処遇の改善が必要です。
経営体力に限りがある中小企業においては人件費の負担を助成金の活用で軽減します。
中小企業の経営者に、中小企業支援の専門家がおすすめする4つの助成金と申請する時のポイントを紹介します。
①助成金とは
助成金は補助金と同じく、国や地方公共団体が中小企業支援のために支給するお金のことです。
審査に重点が置かれている補助金と違い、助成金は要件を備えていれば
原則として受給できることが多くなります。
②助成金のメリット
助成金を受給するメリットは『原則として返済が不要』であること、
補助金のような審査よりも『支給の要件を充たし、必要な条件を達成する』ことで
受給できる可能性が高いことです。
③助成金は原則、返済不要
助成金は原則として返済が不要となります。
ただし要件を充たせなかった、計画を実行しなかった場合は返還する必要があります。
④支給要件の充足と実行が重点
助成金は従業員の労働条件や労働環境の整備を対象とする制度が有名です。
助成金の受給を申請する時は、企業における取組み内容についての審査がありますが、
企業における取組み内容の確認に重点が置かれています。
ただし審査がないというわけではなく、
キャリアアップ助成金のように審査が厳しい助成金もあります。
⑤従業員のモチベーションアップ
直接的な経営改善効果が見えにくい職場環境の改善や従業員への処遇改善は後回しにしがちです。
助成金を活用することで、従業員の処遇改善をより負担が少なく実施することができ、
従業員のモチベーション向上のほか、社員の満足度向上を通じて採用をより
円滑となる可能性もあります。
いま中小企業が活用すべき、おすすめの補助金5選
人手不足による影響が大きい中小企業の経営者が、いま活用すべき補助金5つを紹介します。
①8月より拡充。賃上げをカバーする『業務改善助成金』
《概要》
事業場内最低賃金を引き上げるとともに、
助成対象の事業場において生産性を向上させる投資を行う場合に、
設備投資費用や専門家によるコンサルティング費用の一部が助成される制度です。
2023年8月に対象となる事業場が拡大されるなどの改正が行われました。
申請期限は2024年1月31日までです。
・助成率、助成上限額
助成率は最大9/10、助成上限額は最大600万円です。賃上げ金額や対象の従業員数によって異なります。
引用:令和5年度業務改善助成金のご案内(令和5年8月31日改正版)
② 時間外労働時間規制に対応する『働き方改革推進支援助成金』
(労働時間短縮・年休取得促進コース)
《概要》
勤務時間の短縮や有給休暇取得の促進などのために生産性向上へ取り組む企業に対する助成金です。
専門家によるコンサルティング費用、労務管理用のソフトウェアなどが対象です。
(PCやタブレットなどは原則として対象外です。)
令和5年度制度の申請期限は2023年11月30日までです。
・助成率、助成上限額
助成率は最大で4/5、助成上限額は最大730万円です。
・下記の成果目標3種類および追加成果目標の合計4種類と対象となる従業員数により、
補助金額が変わります。
・成果目標①:月60時間を超える36協定の時間外・休日労働時間数を縮減
・成果目標②:年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入
・成果目標③:時間単位の年次有給休暇を新たに導入かつ特別休暇(病気休暇など)の
いずれか1つ以上を新たに導入
・追加成果目標(任意):上記の成果目標に加えて、
指定する労働者の時間あたり賃金額を3%以上または5%以上賃上げ
引用:厚生労働省 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)のご案内
③非正規社員の正社員化などは『キャリアアップ助成金』(正社員化コース)
《概要》
有期雇用労働者など非正規雇用の従業員を正社員として採用する場合の助成金です。
この助成金全体では下記の6種のコースがあります。
・正社員化コース
・障害者正社員化コース
・賃金規定等改定コース
・賃金規定等共通化コース
・賞与・退職金制度導入コース
・社会保険適用時処遇改善コース
・助成率、助成上限額
非正規社員を正社員として採用する時に1事業所につき20名まで、
1名あたり最大57万円が助成されます。
人材開発支援助成金の訓練終了後の正社員化については
1名あたり最大9.5万円の加算措置があるほか、
派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用した場合の加算措置28.5万円などがあります。
④社員のスキルアップに使える『人材開発支援助成金』(人材育成支援コース)
《概要》
従業員に対して職務関連の知識や技能習得のためのOFF-JTを10時間以上実施した場合の助成金です。
従業員の雇用形態を問わず、利用できることとなりました。
対象となる訓練は下記の3種類があり、それぞれ助成率などが異なります。
・人材育成訓練:職務に関連した10時間以上のOFF-JT
・認定実習併用職業訓練:厚生労働省認定の訓練とジョブ・カードによる職業評価の実施
・有期実習型訓練:有期契約社員の正社員老幼を目指すためのOJTとOFF-JTの組み合わせ
- 助成率・助成上限額
下記のとおり細かく定められています。
引用:厚生労働省 令和5年度版パンフレット(人材育成支援コース)詳細版
⑤あわせて注目したい『都道府県の助成金』『特定の業種が対象の助成金』
上記の助成金はいずれも国の制度ですが、
国の助成金以外にも見落としがちな以下の助成金制度を確認しておきましょう。
- 都道府県、市区町村などの助成金
- 特定の業種向けの助成金(国、都道府県など)
都道府県や市区町村の助成金は金額が少額なことが多いものの、
国の制度にあわせた助成要件となっていることも多いため、確認しておきます。
特定の業種向けの助成金についても数多くあります。
例えば人手不足の影響が大きい建設業向け、
インバウンド集客の強化を図るホテル・旅館業者向けなどです。
参考:観光庁 令和5年度地域一体となった観光地・観光産業の再生・高付加価値化事業
参考:東京都産業労働局 宿泊施設の外国人旅行者受入環境整備支援補助金
助成金申請で気を付けるべき5つのポイント
助成金を申請する時は、以下の点に注意が必要です。
・原則として、申請前に計画を策定、承認後に着手
・申請書類を作る前にやるべきこと
・併給調整に注意
・要件が細かいので専門家の活用が効果的
・受給漏れを防ぐためには自社を理解してくれる専門家が頼り
①事前に計画を策定
助成金は企業が適正に取り組むための経費の一部を補填する制度です。
取組みに着手する前に計画を作成し、申請することが原則です。
②申請書類を作る前に必要なこと
申請書を作成する前に忘れがちな下記について点検しておく必要があります。
・就業規則の整備、就業規則が最新の労働法に適合していること
・雇用保険適用
・労務管理資料の作成と管理
就業規則がない企業、就業規則の見直しをしていないため最近の労働法改正に合致していない企業は、
雇用関係の助成金を受給できない可能性があります。
申請時の書類として就業規則の添付を求められるため、
事前に作成または見直しておきます。
雇用関係の助成金の受給対象として、
雇用保険適用事業主であることが明記されています。
また助成金を受給する前後について、
勤怠や給与などの労務管理資料を明確に作成し、保管しておく必要があります。
受給後に関係機関が検査のために来社することもあります。
③『併給調整』にも注意
併給調整とは、同じ対象について複数の助成金が支給されないようにする仕組みのことです。
取組みの内容によっては複数の助成金の対象となるため、重複が生じないようにされています。
一方、複数の助成金を受給できる場合もあります。
例えば国の助成金を受給しつつ、同じ要件を対象としている都道府県の助成金についても
受給するケースなどです。
組み合わせが複数あるため、詳しい専門家の助言が有効です。
④専門家への相談は、自社を理解してくれる専門家が有効
種類が多い雇用関係の助成金の支給対象は正社員雇用や賃上げなどが多くなります。
正社員雇用や賃金の引上げは長期にわたり企業の収益に影響があります。
『今、人手不足だから正社員を増やす』だけでなく、
補助金を活用した生産性改善のための投資や助成金を活用した残業時間の抑制への
取組みなどを多面的に検討することが必要です。
労務管理などに強みを持つ専門家と連携している、自社のことをよく理解し、
全体を踏まえた相談に親身にのってくれる弊社のような専門家への相談が有効です。
⑤自社で受給できる可能性がある助成金はPMGが提案いたします
助成金制度は種類が多く、要件がそれぞれ細かく規定されています。
忙しい経営者が独自に探すことは負担が重いため、
自社にあった助成金制度を探し、提案してくれる弊社PMGの専門家が経営者をサポートします。
「自社で受給可能性がある助成金がわからない」
「人手不足対策などでの補助金・助成金の受給漏れを防ぎたい」
「申請書の記載方法がわからない」
「単なる賃上げ対策の助成金だけでなく、会社全体の将来を踏まえて検討したい」
上記のようなお悩みをお持ちの経営者さまは、経営者とともに歩む弊社専門家へご相談ください。
まとめ
人手不足の影響は中小企業において深刻さを増しており、
経営者は人材確保と賃上げへの取組みが重要です。採用強化や賃上げ、
労働環境の整備のための取組みは助成金を活用することで、
自社の負担を軽くすることができます。
助成金は補助金と同じく種類が多く、
要件がそれぞれ細かく定められているため、
詳しい専門家の助言を受けることが有効です。
助成金や補助金による経営改善をお考えの経営者さまは、
弊社専門家へお気軽にご相談ください。