2023年09月12日スタッフブログ
「業績が下向きよりも上向きになる状況の方が資金繰りは厳しくなる」
お世話になっております。
PMG Partnersの佐々木でございます。
近年は、新型コロナウイルス蔓延時に比べ、徐々に経営活動が活発となり業績が少しずつ回復している会社が多くなってきました。
その際に中小企業経営者が注意すべき点が今後の「資金繰りの状況」についてです。
実は、売上の下降時よりも上昇傾向の時の方が資金繰りに困窮するケースが多々あります。
会社の業績が良くなっているのに何故か現金が残りにくい、資金繰りがあまり改善されていないと
疑問に感じたことはないでしょうか?
この対策を考えずに進行してしまい、最悪な状態になるのが「黒字倒産」です。
黒字倒産という言葉は最近よく耳にするようになりました。
黒字倒産とは、会社の利益が出ているのにも関わらず、倒産に陥ってしまう状況のことを指します。
会社の利益が増えれば、キャッシュも必然的に増加するとお考えの経営者様も多いと思いますが、
実際は違います。
日々の取引の中で「掛け取引」を行っているケースでは、売上の発生と実際の入金には、
タイムラグがあり、支払いの場合も同様です。
売上は立っているものの、実際に手元に売上分の現金が入金されるのは〇か月後という状況であれば、
一致することはありません。
このことを是非、中小企業経営者様には知っておいていただければと考えます。
それでは、なぜ業績の回復局面に資金繰りに気をつけなければならないのか?
2つのケースで説明させていただきます。
■売上が好調→不調の局面
不調になっても好調時の売上が後に入金されるため、
すぐ資金繰りが悪化するケースは少ない傾向があります。
また、在庫についても好調時に支払済であり、徐々に現金化されていきます。
対策として売上が下がる場合は設備投資を先送りしたり、経費の見直しなどをするため
すぐに資金繰りを見直すことが可能です。
そのため、大きなダメージが残りにくい状況と言えますが、今後のキャッシュの推移については把握する必要があります。
■売上が不調→好調の局面
この場合も売上と入金のタイミングのズレ、原価の計上と支払いのズレが原因となりますが、
注意が必要なのは不調の時は比較的に現預金が少ない場合が多く、
今後売上が上がる際にはそれに伴う費用が先出し資金として発生するということです。
そうすると多くの支払いが先行してしまい、入金のタイミングが後ということになります。
売上が上がる=支払うべきコストも増えてしまい、
不調時は現預金が少ないために先の支払に対応しきれなくなります。
資金の支出はこの仕入れ資金のほかに売上の増減に関係のない支出である固定費も
考慮しなければなりません。
同じ売上と入金のズレ、仕入れの計上と支払のズレが発生しても、
好調→不調の経営状況の局面と不調→好調の経営状況の局面では考え方が全く異なる
ということになります。
そのため回復局面は特に資金繰りに気をつけなければなりません。
今回お伝えしたいポイントは以下の内容となります。
■売上が回復局面になればなるほど売上代金とのズレも増加
■それに伴い先立って持たなければならない費用の増加や固定費の考慮
■これは損益計算書だけを見ていては資金不足に気づきにくい
全ての会社が該当するわけではないのですが、
現金商売の業種以外の会社の場合は起こりうる可能性があることを認識してください。
また売上が上がる局面では消費税の納税についても注意が必要です。
業績回復の局面では期末にかけて消費税がいくらになりそうか今ある現預金で賄えるのか確認し、
納税対策も視野に入れる必要もあります。
銀行では納税資金の借入はできますが、対象となるのは法人税のみであり、消費税は対象となりません。
そのため、会社の運転資金とは別で消費税の納税資金も別個で管理する必要があります。
このように、会社の資金の状況を把握するためには損益だけでなく、
資金の現状と今後の予測をすることで何をしなければならないのか気づくことができ、
対策を打つくことが可能となります。
是非、今後の経営で資金のやりくりにお困りの経営者様は資金繰り表の作成してみてください。